バカンスにこだわるフランス人を揶揄するシャルリー・エブド
タンクトップに短パンでも暑さがしのげなかった日々から一転、ここ数日は長袖長ズボンでも肌寒い日々が続いています。
ヨーロッパの変わりやすい天気にはいつまでたっても慣れませんが、それに対抗するかのように変わらなくて笑ってしまうのが・・・
フランス人のバカンス習慣
猛暑だろうと冷夏だろうと、太陽や海を求めて南下する(または西に移動する)フランス人たち。
太陽を浴びるためなら国境を越えて慣れない環境で長期滞在することも厭(いと)わないフランス人たち。
そんな同国人をシャルリー・エブドがネタにしています。
【風刺画 その一】
この時期(7月末から8月初旬)のフランスの風物詩と言えば・・・
コレ ↓
高速道路の渋滞です。
2〜4週間の夏休みを7月か8月のどちらかに無理矢理“詰め込む”というのがフランスの伝統らしく、毎年必ずこの時期に渋滞が始まり、それが8月初旬まで続くのです。
7月派(Juilletiste)と8月派(Aoûtien)なんて呼び名までついているほど定着したこの習慣を、ネタにしないわけにはいかない!
というわけで、先週のシャルリー・エブドに載ったのが、この風刺画 ↓
「俺たちの習慣をテロリストに変えられてたまるか!」
・・・と言いながら渋滞に巻き込まれるフランス人が本当にいるかどうかはさておき、テロの脅威を感じつつ意地でもバカンスを取って遠出するのがフランス人たちなのです。
【風刺画 その二】
イスラム国の特徴といえば、多国籍の戦闘員、ビデオ勧誘、黒ずくめの服装など色々ありますが、その中でも世界中を恐怖に陥れているのが「首切り画像もしくは映像」。
その「首切り」と「フランス人たちのバカンス」をかけたのが、先週の表紙でした ↓
「怖かない」と題した絵の中で、頭部のない体がビーチタオルに乗っていて、頭が「イスラム国にバカンスの邪魔はさせない!」
と言いながらジュースを飲んでいます。
この絵はチュニジアで多くの死者を出した海岸テロになぞらえて、自分の首を斬ってでもバカンスは強行したい!というフランス人の意地を風刺しています。
また、男性の体が砂の中にあると捉えた場合、ビーチタオルに乗っているのは人形ということになり、「既に斬られているようにみせて敵を欺く」作戦で、用意周到にバカンスを満喫しようとしているともとれます。
【風刺画 その三】
フランス人たちがバカンス先ですること、それは・・・
「できるだけなにもしないこと!」
一日中海岸に寝そべってボーっとする、というのが多くのフランス人のバカンスの目的なのです。
「何もかも忘れてのんびりしてくるわ!」と宣言するフランス人のなんと多いこと。
その傾向を風刺したのがこの絵 ↓
「バカンス中は何もかも忘れるわ!」と言う女性の目の前で、彼女の子供とみられる子が溺死しています。
ブラックだ・・・と思えばそれまでですが、親の目が行き届かないところでの海難事故は毎年ニュースで報道されます。それに加えて監督責任をほうりだしてでもバカンスを満喫しようとしている人がいるのだから話になりません。
今年は大人も含めると、6月以降一日4人のペースで水難死亡事故が発生しているのだとか・・・
http://www.estrepublicain.fr/actualite/2015/07/30/noyades-pres-de-quatre-deces-par-jour
“何もかも忘れた”結果がこれでは元も子もありません。
【風刺画 その四】
フランス人(欧米人?)の多くは日焼けした肌を好みます。
紫外線が肌に及ぼす悪影響はここ数年でメディアが取り上げるようになったとはいえ、庶民にはなかなか理解されないまま。
それを風刺したのが、チュニジアのテロ直後に描かれたこの絵 ↓
タイトルは「Canicule Akbar !」( 猛暑は偉大だ!)
今にも干からびそうな男女が砂浜に寝そべっていて、女性が一言。「テロは免れるかもしれないけど、皮膚ガンは避けられないわね」。
そんなカップルを前に、元凶の太陽まで白けるという描写つき。
適当に描かれたような絵と文の中に、チュニジアの海岸テロ、フランス人のバカンス習慣、フランス人の日光浴好き、フランス人の紫外線に対する無知(または無理解)、フランスに蔓延るテロの脅威、最近の猛暑が詰め込まれた秀逸な風刺画です。
以上、フランス人が愛して止まない海辺のバカンスを扱き下ろす、シャルリー・エブドの風刺画4点でした♪