HIROSHIMAからFUKUSHIMAへ (加筆・修正済み)
8月4日、HISTOIREという歴史専門チャンネルが「De Hiroshima à Fukushima portrait de Dr Hida(広島から福島へ 肥田医師のポートレート)」というドキュメンタリーを放送しました。
この日はarteやその他のチャンネルでも原爆特集が目白押しでしたが、この番組が最も根本的な問題に迫っていたと思います。
ドキュメンタリーの主人公は、医師・肥田舜太郎、98歳。
肥田氏は広島に投下された原爆で被爆しながら、その直後から他の被爆者の治療にあたってきました。
彼は言います。
「被爆者の体調は薬を飲んだり他からの介助でよくなることはない」
その理由は、「土台がすでに悪くなっている」からだそうです。
一度蝕まれた身体はもう元には戻らない。
このことは、残念ながら福島で被爆した(している)被災者にも当てはまります。
政府は、福島やその周辺地域に限って、被爆放射線量を年間20ミリシーベルト(他の地域の20倍!)を上限と定めました。
「年間20ミリシーベルト」
これは一年で20ミリシーベルトですが、2年目に突入したからと言ってリセットできるわけではありません。
5年で100ミリシーベルト、10年で200ミリシーベルトを浴びていいと言っているのです!
その間、被災者の身体は蝕まれ続けます。
広島の原爆と福島の原発事故の大きな違いは、原爆が一度きりだったのに対して、原発事故は今も続いていること。
放射線量の桁が違うと言う人もいますが、被爆放射線量に下限はなく、低線量被爆のほうがタチが悪いこともわかってきています。
番組に出演したもう一人の東京の医師は言います。
「東京の子のデータも悪い。」
「(今の医学では証明のしようがないから)データを集めなければならないのに誰もやっていない」
そして、こう結論づけます。
「子供たちは東京からも出たほうがいい」
東京でこの評価なら、福島はもう、人が住んでいい環境にはありません。
原爆の被爆者と福島の被災者を比較して思い知らされるのは、それぞれに対する国家(原爆の場合はアメリカを含む)の扱いが、揃って非人道的だということです。
原爆投下直後、広島と長崎にABCCというアメリカによる被爆調査機関が設置されました。
この機関は、被爆者の治療以外の調査や実験のために作られ、被爆者たちは人形のように扱われたと言われています。そんなアメリカの態度に異議申し立てすることもなく、平然と協力していたのが当時の日本政府です。
そして今、福島の被災者は体調不良を訴えても「原発事故との因果関係は不明」、酷い場合は「事故とは無関係」と突き放され、国が被災者の身体を気遣う様子は微塵もありません。
原爆の被爆者の実態が国家機密に指定され、福島の現状は秘密保護法で国民から知る権利を奪っています。
福島は広島・長崎の二の舞。
原爆投下から70年の今、遠く離れた福島で同じことが繰り返されているのです。
番組の最後に、2012年6月、国に抗議するために国会に出向いた福島の女性たちが映し出されます。
その中の女性の一人が言いました。
「福島の女性たちは人類の創世から学びなおしたんです。どれほど人間が愚かかということを学び直したんです。・・・政府の嘘はばれているんです。」
気づいている人はいる。
でもまだ騙されている人もいる。
肥田医師は「自分で自分の命を守るのが放射線との戦いだ」と訴えます。
真実がいとも簡単に埋もれてしまうことを身をもって知った氏が、福島の被災者に投げかける貴重な言葉です。
今回の番組を手がけたMarc Petitjean氏のホームページで、ドキュメンタリーの一部(6分11秒)を閲覧することができます。(ほとんど字幕なのでフランス語を解しない人でも理解できる内容です。) ↓
http://www.marcpetitjean.fr/films/de-hiroshima-a-fukushima/
また、ドキュメンタリーを放送したHistoireでは、8月末まで7回の再放送を予定しています。在仏の方は是非ご覧ください ↓
http://www.histoire.fr/programmes/de-hiroshima-%C3%A0-fukushima-portrait-du-dr-hida-27413
再放送 ↓
Jeudi 6 Août 2015 À 13:35
Dimanche 9 Août 2015 À 16:15
Mercredi 12 Août 2015 À 08:25
Dimanche 16 Août 2015 À 07:10
Mardi 18 Août 2015 À 13:25
Vendredi 21 Août 2015 À 08:25
Jeudi 27 Août 2015 À 00:20