続・真(ま)フランスの日常

フランスの時事、フランス生活の実態、エコライフ、日本を想う日々・・・                                    (ココログで綴っていた「真(ま)フランスの日常」 http://mafrance.cocolog-nifty.com/ の後継ブログです) 反核・反戦!

シャルリー・エブドは難民を馬鹿にしているのではない

シャルリー・エブドの風刺画に関してまた偏向報道がなされているようです。

 

 

問題とされている風刺画は2点。どちらも世界中に衝撃を与えた、シリア人幼児の溺死体の写真を元に書かれた絵です。ただし、どの日本語メディアも先週号には関連した風刺画は2点しかないような報道をしていますが、例の写真を元に書かれた絵は私が数えただけで7点、文章だけで綴られた記事も少なくとも2件ありました。

 

 

シャルリー・エブドの風刺画に関する報道を日本語で読むたびに思うのは、実際に紙面を手に取らずに他者の報道のみを元に書かれ、あまりにも無責任だということです。

 

 

2点の風刺画は裏表紙にあり、恐らく最初に批判を流布した人間もこのページだけを見て中身を確認しなかったのでしょう。

 

 

今回掲載された関連風刺画は、風刺画の読み方を知っている人なら誰も問題視しない内容であり、文章の記事を読めば明らかにシャルリー・エブドが難民側に立って報道していることがわかります。特に先週号の社説では、難民の大量受け入れを決めたドイツを絶賛。「Chapeau, les Boches !」という、「いつもはドイツを馬鹿にする風刺画を書いているけど、今回ばかりは脱帽したぜ!」というような意味がこめられたタイトルがつけられています。その社説を書いたのは、他ならぬRiss:今回問題とされている風刺画を書いた本人です。また、いつもどうでもいい話をして笑わせてくれるコメディアンMathieu Madenianもこの写真に触れ、こういう写真が出回らないと人は動かない、という辛辣な内容の記事を寄せました。

 

 

私自身、この写真が出回っているという話を耳にしたとき、「絶対に見ない」と誓いました。同じ年代の子供がいる親として正気でいれらなくなる気がしたからです。初めのうちはフランスのメディアも掲載をためらっていたところが多く、見ないで済むだろうと思っていました。ところが数日たったころから写真が堰を切ったように溢れ出し、結局すぐに目を逸らしたものの見てしまい、いまも脳裏に焼きついているのは言うまでもありません。

 

 

シャルリー・エブドは写真を掲載しなかったメディアも批判しています。先週の水曜日のこの号を読み始めたときは、関連風刺画の多さに戸惑いましたが、読み進んでいくうちに「直視するべきだ」というシャルリーの意図が読み取れ、これだけの風刺画と記事を載せた理由を理解しました。

 

 

問題とされている2点のうち、一つには、幼児の死体の横にマクドナルドを思わせる看板が立っています。世界中に蔓延るファーストフード業界はシャルリー・エブドの天敵の一つ。原材料が不明で、適切な食習慣を乱し、肥満の元凶とも言われているファーストフード店が無知で無関心な大衆に好まれ、子供たちを洗脳しながら幅を利かせる西ヨーロッパが奇しくも難民の目的地となっていることを風刺しているのです。紛争が続く国よりはマクドナルドが溢れる地のほうが当然平和ではあるけれど、「希望の地」と言われるほどの価値が果たしてヨーロッパにはあるのか。

 

 

私はかれこれ4年ほどフランスの地方の田舎町に住んでいますが、5000人規模の町にもマクドナルドが存在し、そこに行くことが実際に近所の子供たちの楽しみの一つになっています。「今晩はマクドよ」と親が言えば飛び上がって喜ぶのです。我が家はオーガニック一辺倒なので絶対に行きませんが、5歳の息子を説得するのに随分苦労しました。

 

 

シリアの現状とは比べ物にならないとはいえ、まだまだ問題だらけのヨーロッパを難民たちが目標にしていることを風刺しただけでこの騒動。

 

 

マクドナルドを始めとする消費社会に対する問題意識がない人が大多数のうちは、シャルリー・エブドが理解されることはないのだろうと思い知らされた案件でした。

 

 

 

 

シャルリー・エブドは難民を馬鹿にしているのではない

 

(先週号のシャルリー・エブド:1207号の一部。問題とされている風刺画の一つは右端中央。)