フランスの中学校でついに“卒業式”が導入される
日本とフランスの学校システムの違いは、いちいち挙げたら限がないほど沢山あります。
その中でも違いが突出しているのが式典の有無。
日本では入学式に始まり、終業式、始業式、卒業式が幼稚園から大学卒業まであるのが当たり前ですが、フランスにはその類の式典は、ほとんど存在しません。
つまり、就業初日に普通に授業が始まって、終了日も普通の授業で終わるのが通常なのです。
あんまり何もないので「物足りない」とか「けじめがつかない」と思う人もいるかもしれませんが、あらゆる式典を煩わしいと思ってきた私などは「楽だなぁ」と感じます。
さて、そんなフランスに“卒業式”を導入しましょう、と旦那さんの天敵・ヴァロー=ベルカッセム教育大臣が提案した・・・と9月末にフランスの各メディアが報じました。
(記事の写真はお隣ドイツの卒業式の模様)
なぜ“卒業式”にカギカッコをつけたかというと、正確には『中等教育修了証書授与式』で、その名の通り修了証書を授与するだけの、国歌斉唱とも校長の長話とも無縁の日本のそれとは似ても似つかないものになりそうだからです。
しかも導入されるのは中学校のみ。高校で導入しないのは、義務教育の終了を祝うことに意味があるからだそうです。
この導入案で一番興味深いのが、“卒業式”が予定されている日。「9月の第一水曜日」に全国一斉に開催する予定だということですが、9月といえば、新年度が始まるのでほとんどの学校はてんてこ舞な時期です。(日本で言えば4月の第一水曜日に“卒業式”をやろう!と言っているようなもの。)そんな時に“卒業式”とか、ややこしすぎる。
でもこれには揺るぎない理由があります。というのも、Brevet(中等教育終了試験)が終わって結果が出るのは7月上旬。その後に卒業式をするとなるとバカンスに食い込んでしまう。それだけは避けたい=神聖なバカンスを一日でも縮小する法案なんて邪道・・・ということでこのような滑稽な案になってしまったのではないか・・・と私は推測しています。(他の理由を見つけた方はご一報ください 笑)
以前、このブログで現社会党政権が『中学校改革案』を強行採決したという話をしたことがありますが、“卒業式”導入案のほかにも、これまで20点満点としてきたフランスの伝統を覆す「50点満点」を導入しようとしているなど、その後も“教育改革”の名の下に無意味な法案が相次いで提出されています。
数週間前には、Parisienが一面で「Brevet des collèges L'usine à gaz」(無意味な中等教育終了試験改革)と大々的に批判しました。
反対派は少しずつ増え続け・・・
ついに、昨日、その中学校改革に対するささやかなデモがパリで発生しました。
(写真は「以前、私はラテン語の教師でした。」と書かれたプラカード。事実上廃止となるラテン語の授業があったころ、つまりは今回の改革案が成立する前(数ヶ月前)の“古き”良き教育システムを惜しむ皮肉が込められている。)
右派のフィガロ紙週末号は一面報道。左派が多い教師たちと意見が一致するのは珍しい。それほどこの改革が無謀である証拠。
(ドイツ語の授業などに関する改革の詳細はコチラ→ その一 その二)
デモの規模は数千人で大したことはなかったようですが、数ヶ月前に成立した法案に対してこれだけの人が全国から集まるのはさすがです。しかも世論調査を見てみると・・・
教師の74%、そして国民の6割が反対しているという結果が出ているではありませんか!
それに加えて、中学校改革と同時に提案されていた『小・中学校学習指導要綱』がConseil supérieur de l'education 教育最高審議会(直訳)で否決されたのだとか!
“卒業式”はともかくとして、他の法案や法律に対する民意に耳を傾けておかないと、12月の地方選挙は散々な結果が待ち受けてると思うけどなぁ・・・オランド大統領の支持率はすでに20%前後を低迷してるし・・・