元凶にも希望にもなる宗教指導者 −イマームの言葉―
フランス全国で毎日100件以上の家宅捜索が続いています。
長閑(のどか)さだけが取り柄の我が県でも、日曜日から今日までに数件の家宅捜索があったようです。
対象者の中には、潜在的なテロリストと見られる人物などの他に、Imam(イマーム=モスクのイスラム指導者)も含まれています。
「イスラム国」の勧誘はインターネット上で行われていると言われていますが、過激化するきっかけの多くがモスクにあることは以前から指摘されていました。
テロ直後には、ヴァルス首相が「過激主義のイマームは追放する」と宣言。
そして昨日、テロ前に拡散されたビデオが物議を醸していたImam de Brestブレスト県のイマームのモスクが家宅捜索されました。
ビデオの中でイマームは「音楽を聞いたらサルか豚になってしまう可能性があります。だから今すぐに貴方たちのMP3から音楽を消しましょう」と説教。
イスラム過激主義や原理主義が音楽などの文化的な生活を否定していることは知られていることですが、問題はこの説教をした相手。
なんと、このイマームの話を聞いているのは数十人の子供たちだったのです!
「音楽を聞くな」という話を聞いたからといってもちろんその通りにするとも限らないし、それが過激主義に繋がるとは言い切れない。
でも、このような説教を鵜呑みにした暁には、文化的な生活に勤しむフランス人たちとはどうやっても価値観を共有できずに、フランスの文化ひいてはフランスという国に対して憎しみを感じるようになるだろうことは想像に難くありません。
このイマームは、今回のテロに関して「イスラムとは無関係の野蛮な行為だ」というコメントを出しています。
一方、ボルドーが県庁所在地のGironde県のCenonという町のイマームは、「Gironde県だけで問題視されているイマームが2〜3人いる」と言います。彼らの説教を聞いたイスラム教徒が「洗脳」され過激化した例があるのだそうです。
フランス国内の宗教指導者が元凶になることはある。
そして元凶になるイマームほど、テロの度に責任を逃れようとする。
Cenonのイマームは更に「暴力を誘発するような説教をするイマームはもはや「自称イマーム」であり、排除されなければならない。」とヴァルス首相に同意します。
それにしても、何故同じイマームでこれほどの考え方の違いが出てくるのか。
それは、イスラームをすべてとするか、同化を第一とするかが大きな分かれ道となっているからです。
Agenという街のイマームは「フランスには愛するか出て行くかの選択肢しかない。」と断言。まるで極右の発言のようですが、同化に重点を置くと答えはこれしかありません。
インテリで有名なBordeauxのイマームは「文化と教養を盾に過激主義と戦っていかなければならない。」と、共和国の精神に則(のっと)った考えを示しています。
イマームは希望にもなる。
フランスで最も名の知れたDrancyの超穏健派イマームは、テロ直後に「ここフランスには憎悪の言葉を発する人間の居場所はない」と述べたあと、「シャリーア(※)を支持する人間は出て行け!」と言うなど、この人は本当にイスラム教徒なのだろうか??と疑ってしまうほどの、ある意味“過激”な発言をしました。 (※イスラーム法=コーランと預言者ムハンマドの言行を法言とする法律)
(ちなみに彼は同様の発言を繰り返しているため、過激派からの脅迫を受け、護衛なしの移動が出来ない日々を強いられている。)
そして昨日、Narbonneという街のイマームが訴えました。
「フランスに3000あるモスクや礼拝所のうち、イマームがいるのはその2割に過ぎません。そして、その2割のイマームのうち8割はフランス語を話しません。今求められているのは、フランス語を話し、フランスを理解するイマームです。」
そもそもがイマームが少ない、イマームがいてもフランス語を話さない、フランス語を話しても過激主義者の場合がある、となればモスクがテロの温床になってしまうのも納得せざるを得ません。
フランス人のイスラム教徒による悲惨なテロが起きてしまった今、同化が絶対条件であることを知っている穏健派イマームが協力しあって状況改善に取り組むことが早急に求められています。
※テロ後のイマームの発言 ↓ (フランス語)
Girondeのイマーム
Bordeauxのイマーム
Brestのイマーム
Agenのイマーム
http://www.sudouest.fr/2015/11/17/pour-l-imam-la-fran-ce-on-l-aime-ou-on-la-quitte-2187834-4778.php
Drancyのイマーム