続・真(ま)フランスの日常

フランスの時事、フランス生活の実態、エコライフ、日本を想う日々・・・                                    (ココログで綴っていた「真(ま)フランスの日常」 http://mafrance.cocolog-nifty.com/ の後継ブログです) 反核・反戦!

これはフランス人を馬鹿にしていることになるのだろうか?

書こう書こうと思っていて今頃になってしまったことを一つ・・・

 

 

3月9日、2014年にFessenheim(フェッセンアイム)の原発で起きた事故が過少報告されていたことをドイツ紙がつきとめたことを受けて、シャルリー・エブドが以下のような原発特集を組みました ↓

 

これはフランス人を馬鹿にしていることになるのだろうか?

 

(2016年3月9日付、1233号の8・9ページ)

 

 

「Du haut de ces centrales, 20000 becquerels vous contemplent.  原発の頂から、2万ベクレルが諸君を見つめている。」と言っているのは、防護マスクを付け、同じく防護マスクを付けたラクダに乗った「ナポレオン」。

 

これは「Du haut de ces pyramides, 40 siècles vous(nous) contemplent.(ピラミッドの頂から、四千年の歴史が諸君を見つめている。)」という彼の名言をもじったもの。

 

「ピラミッド〜」の名言は、ピラミッドの戦いを制した兵士たちを称えるためにかけられた言葉ですが、今回の風刺画は、観光大国、芸術の国であると同時に原発大国でもあるフランスのもう一つの姿を見てみぬ振りをする私たちに警鐘を鳴らすために描かれたと言えます。

 

 

 

ナポレオンを取り囲む風刺画を一つ一つ見てみると・・・

 

 

これはフランス人を馬鹿にしていることになるのだろうか?

 

黄色い煙をモクモクと吐き出し、緑色の汚水を垂れ流す世界遺産『シャンボール城』

<フレンチ・原子力・ルネッサンス>という副題付き。

 

実際のシャンボール城 ↓

 

これはフランス人を馬鹿にしていることになるのだろうか?

 

 

 

 

これはフランス人を馬鹿にしていることになるのだろうか?

 

『Lisieux大聖堂』

1954年に建てられた比較的新しい大聖堂ですが、フランスで2番目に巡礼者が多いのだとか。

画には<EPR、子、聖霊の名にかけて>とありますが、これは「父と子と聖霊(三位一体)」の父(Père)とEPRをかけたダジャレ。EPRはEuroprean Pressure Reactor(欧州加圧水型炉)の略。

 

 

 

 

これはフランス人を馬鹿にしていることになるのだろうか?

 

放射性廃棄物をロープウェイで運搬する『モンマルトルの丘』

 

 

 

 

これはフランス人を馬鹿にしていることになるのだろうか?

 

放射性廃棄物で埋め尽くされた『パレ・ロワイヤル』の中庭

これは、1986年に中庭に配置されたアート作品『Les Colonnes de Buren』と、このブログでも一度紹介したことのあるBure村の核のゴミ処理施設をかけたもの。

 

実際の中庭 ↓

 

これはフランス人を馬鹿にしていることになるのだろうか?

 

 

 

 

これはフランス人を馬鹿にしていることになるのだろうか?

 

日本人が大好きな『モンサンミッシェル』・・・ではなくて『モン・トリカスタン・ミッシェル』。

なぜ「トリカスタン」かというと、リヨンの南150キロのところに『トリカスタン原子力地区』という大規模な原子力関連施設があって、運河に囲まれているため同じように水(海)に浮かぶ『モンサンミッシェル』を連想させるから。

 

 

 

 

これはフランス人を馬鹿にしていることになるのだろうか?

 

最後は、ヴィクトル・ユーゴーの『Notre-Dame de Paris(ノートルダム・ド・パリ)』ならぬ『Notre-Dame irradiée de Paris(汚染されたノートルダム・ド・パリ)』。

<原発が800歳になったら才気溢れる詩人が書くであろう・・・『汚染されたノートルダム・ド・パリ』

カジモド「エスメラルダよ、そんな外見だと今回のデートはお預けだね。『被爆した男を手に入れよう.COM(※)』に登録したほうがいいよ。」>

(※adopteunmec.com(男を手に入れよう)という名前の出会い系サイトが実際に存在する。)

 

 

 

 

どの風刺画も度が過ぎていて相変わらず下品でetc色々感想はあると思いますが、世界遺産の分布図と原発のそれを並べてみると・・・

 

 

 これはフランス人を馬鹿にしていることになるのだろうか?

 

これはフランス人を馬鹿にしていることになるのだろうか?

 

 

似てるかも(笑)

 

 

大きな違いは、一方が世界的に名高く手放しで評価されていて訪れる人が後を絶たないのに対して、もう一方は実際に事故が起こるまで人々が無関心なこと。

 

 

これらの風刺画を見て思い出さずにはいられなかったのが、福島の原発事故を題材にした、あの風刺画

 

 

腕や脚が2本以上ある力士が描かれた風刺画。

 

 

たぶん今でも誤解している人が沢山いると思うけれど、シャルリー・エブドではなくてカナール・アンシェネ(もう一つのフランスの風刺新聞)に掲載された風刺画。

 

 

日本人皆でよってたかって「福島の被災者を馬鹿にしている!」と批判していたけれど・・・

 

 

そんなわけがありません。

 

 

 

今回のシャルリー・エブドの風刺画にも奇形が沢山描かれました。

 

 

くちばしが3つある鳥、目が3つある生き物、顔中こぶだらけのシスター、顔が二つあるヒツジ、胸が4つもぶら下がったエスメラルダ・・・

 

 

これらの絵を見て、「うわぁ、フランス人がフランス人を馬鹿にしてる!」と思った人はいないはず。

 

 

 

奇形を描くということは原子力の怖さを描くということ。

 

 

目に見えない、臭わない、味のしない放射能をそのまま絵にすることはできません。

 

 

煙や排水の画だけでは伝わりません。

 

 

だから原発を批判する風刺画には、奇形が描かれます。

 

 

 

今回のシャルリー・エブドの原発風刺画がフランス人を馬鹿にしているのではないように、あの福島の風刺画も被災者を馬鹿にしているのではないのです。