続・真(ま)フランスの日常

フランスの時事、フランス生活の実態、エコライフ、日本を想う日々・・・                                    (ココログで綴っていた「真(ま)フランスの日常」 http://mafrance.cocolog-nifty.com/ の後継ブログです) 反核・反戦!

チェルノブイリから30年 〜フランスのキノコはまだ汚染されている〜

30年前の4月26日未明、ソビエト連邦にあったチェルノブイリ原発の4号機が爆発。膨大な量の放射性物質が空気中にばら撒かれました。

 

 

ただし、爆発から丸2日間、事故を把握していたのはソビエト連邦だけ。

 

 

その後、スウェーデンの原発で高線量が確認され、雲の流れをたどって事故が発覚したわけですが・・・

 

 

事故から3日目の夜、当時のフランス大統領Valéry Giscard d'Estaingは20時のニュース番組で「放射性物質を含む雲は、いずれにせよ市民に危険を及ぼすものではない。」と言及。西ドイツの内相・Friedrich Zimmermannは「危険なのは原子炉から30〜50キロ圏内のみで、我々は2000キロも離れている」という声明を出しました。

 

 

4月30日にはフランスの大学教授(御用学者)が「(チェルノブイリの)雲はフランス―ドイツ間の国境で止まった。」と断言。この子供だましのような嘘は瞬く間にフランス全土に広がり、今も伝わる“迷言”となっています。

 

 

そんなフランスで、国民に真実が知らされることになったのは、事故から16日が経過した5月12日。リベラシオン紙が“放射性の嘘”と題し、<フランス政府は嘘をついていた。放射性物質は国境を越えフランスに降り注いでいた。>と暴露したのがきっかけでした。

 

 

しかし、時すでに遅し。

 

 

16日間、何の対処もされなかったことで、国民のほとんどが体外被曝はもちろんのこと、呼吸や食品による内部被爆も被ってしまったのです。その間、西ドイツなどでは放射線量が基準値を超える農作物を廃棄していて、対策を取った国と取らなかった国との間で被爆量に大きな差が出ていると言われています。

 

 

 

 

あれから30年。

 

 

フランスにおけるチェルノブイリ事故に対する危機意識の無さはまったくと言っていいほど変わっていません。

 

 

その証拠に、26日の公共放送の夜8時のニュースでは「チェルノブイリ事故30年」を完全スルー。民放でも、まるで他人事のように取り上げただけでした。

 

 

 

 

30年はセシウムの半減期とされています。

 

 

でも30年前にフランスにも放射性物質が降り注いだのは事実。ならば、セシウムが半減しているとはいえ、今も事故の影響は続いていると言えます。

 

 

セシウムは本当に半減しているのか?やっぱりフランス国内では東部が一番汚染されてるのか?キノコはもう食べても大丈夫?野菜や果物の放射線量は?

 

 

などなど、気になることは沢山ありますが、フランス政府があてにならないので、頼みの綱は独立機関のみ。

 

 

福島でも市民が始めた調査団体が沢山できているようですが、チェルノブイリの事故直後にもフランスで原発ロビーに対抗する独立団体がいくつか立ち上げられました。

 

 

そしてそのうちの一つ、L'Acroという、研究者と市民ボランティアで構成される放射線調査団体が、チェルノブイリ30年を機にサンプルを募り、フランス各地や欧州数カ国の放射線量を計測しました。

 

http://tchernobyl30.eu.org/resultats/

 

 

対象になったのは、?土壌、?きのこ類、地衣類(苔に似た菌類)、?野菜・果物、医療用および食用ハーブ。

 

 

 

 

?まず土壌は、汚染が酷いと言われてるフランス国内のアルプス山脈を中心に、オーストリア、ベルギー、アイルランドなどの150ヶ所で採取されました。

 

 

結果は・・・

 

 

 

 

チェルノブイリから30年 ~フランスのキノコはまだ汚染されている~

 

ご覧のとおり、アルプス山脈のあたりが真っ赤に染まっています。

 

 

山、特に積雪のあるところは、雪が降る度にセシウムがどんどん蓄積されていくので必然的に高線量になるそうです。(オーストリアの線量が高いのもこのため)

 

 

今回の調査で一番線量が高かったところは、6万8000ベクレル/kg。

 

 

これをシーベルトに置き換えると、この場所に8時間留まると34,15マイクロシーベルト被爆することになり、29日間滞在するだけで年間許容量の1ミリシーベルトを超えてしまうことを意味します。

 

 

 チェルノブイリから30年 ~フランスのキノコはまだ汚染されている~

 

この表によれば、アルプス山脈の15ヶ所のうち、一年以内の滞在で年間許容量の1ミリシーベルトを超えるのは11ヶ所に及びます。(表の左から:地名、土壌一kgあたりの放射線量(ベクレル)、その場所に8時間留まったときに浴びる放射線量(マイクロシーベルト)、その場に留まり続けて一ミリシーベルトに達する日数)

 

 

平地で一番線量が高かったのは、アルザス地方のHaut-Rhin県。やはり、東部は地理的な理由で汚染が残っているところが多いようです。

 

 

ただし、東部に限らず中部以西でも高線量を示す場所(地図上のオレンジ色)が所々にあります。

 

 

チェルノブイリから30年 ~フランスのキノコはまだ汚染されている~

(今回の土壌調査で最も高線量を検出した、Restefondと呼ばれる、見た目は何の変哲もない山の斜面。)

 

 

放射性セシウムを濃縮しやすいと言われているキノコ類の調査では、サンプル64個中、81%からセシウム137が検出されました。

 

 

最も高線量だったのは、ルクセンブルクで採取されたシロカノシタ(Pied de mouton):4410ベクレル/kg。

 

 

フランス国内では、ドローム県のアンズタケ(Chanterelle)が、860ベクレル/kgと断トツで高線量でした。

 

 

ベクレルの安全基準は、専門家によってマチマチで一概には言えませんが、例えば福島の原発事故後に基準値を上げた日本の場合は・・・

 

一般食品  100ベクレル/kg

乳幼児食品 50ベクレル/kg

牛乳    50ベクレル/kg

飲料水   10ベクレル/kg

 

となっていて、今回サンプルとなったドローム県のキノコは日本の基準値も余裕で超えていることがわかります。

 

 

フランスの市場に出回っている食品の放射線量がどのくらい調査されているのかは不明ですが、キノコ類は今も注意が必要で、子供や妊婦、授乳中の女性は食べないほうがよさそうです。

 

 

 

 野菜や果物、ハーブは、そのほとんどからセシウムは検出されなかったようです。(←この調査で唯一の朗報)

 

ただし、アイルランドで採取された一部のハーブからは数十ベクレル/kgが出ています。

 

また、コルシカ島のイノシシから微量のセシウムが検出されたほか、ノルウェーのトナカイから690ベクレル/kgの高線量が、鹿からも25,3ベクレル/kgが検出されています。(これらの動物はキノコを好んで食べるため、セシウムが体内に凝縮されやすい)

 

トナカイも鹿も野生ではなく、食品スーパーで生肉として売られていたものだそうで、スカンジナビア半島では、むやみにこれらの肉を食べないほうがよさそうです。

 

 

(参考)

 

http://www.arte.tv/magazine/karambolage/fr/larchive-tchernobyl-karambolage

 

http://www.acro.eu.org/tchernobyl-30-ans-apres-bilan-de-la-cartographie-citoyenne-du-cesium-137-dans-lalimentation-et-lenvironnement/