カストロを擁護するフランスの環境大臣
11月25日に死去したキューバのフィデル・カストロの埋葬式典に出席したフランスの環境大臣・セゴレーヌ・ロワイヤルがこんな発言をしました。
(まずはカストロの“功績”について)
「カストロのお陰で、キューバ人は領土と生活、そして運命を取り戻しました。彼らはフランス革命に倣(なら)いつつも、フランス革命ほどの暴力に訴えずにそれを実行しました。」
Grâce à Fidel Castro, les Cubains ont récupéré leur territoire, leur vie, leur destin. Ils se sont inspirés de la Révolution française sans pour autant connaître la terreur qu'il y a eue pendant la Révolution française.
(国連が非難しているキューバにおける人権侵害について聞かれると・・・)
「とにかく、色々なデマが飛び交っています。私が見る限り、キューバとまともな外交関係にあった国はありません。・・・どんな歴史にも良い部分と悪い部分が存在するわけですが、それを人権の名のもとに都合よく解釈する人たちがいます。ここ(キューバ)に関して言えば、政治犯のリストを公開要請しても無いのです。貴方たち(ジャーナリスト)が政治犯のリストを入手したならば、それを基に何かできるかもしれませんが。」
Ecoutez, il y a beaucoup de désinformation, ce que j'observe c'est que jamais les relations diplomatiques n'ont été coupées avec Cuba...Il y a toujours du positif et du négatif dans les histoires, mais certains ne vont pas se rhabiller à bon compte au nom des droits de l'homme alors qu'on sait qu'ici, quand on demande des listes de prisonniers politiques, on n'en a pas. Eh bien fournissez-moi des listes de prisonniers politiques, à ce moment-là on pourra faire quelque chose
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
私自身、キューバについてはよく知らなかったのですが、彼女の発言に対するフランス人の反応を見て、これはただ事ではないと思いました。
日本でも、“南京大虐殺はなかった”などと言う輩がどんどん増えているようですが、彼らは“死者数”が違うと言っていて、南京で日本兵が“大勢”の民衆を殺したことは認めています。
ところが、今回のロワイヤルの発言は、「キューバには政治犯そのものが存在しない」と言いきった上で、カストロの“潔白”を謳っていて、国連や亡命者の証言を完全否定しているのです!
キューバに政治犯がいた(尚且つ今も「いる」)かどうかは、日本語でも以下のような記事を読めば事実だろうということがわかるし、そもそもがアメリカに限らず国連が非難し続けているし、国際人権NGOのアムネスティは、“今年の10月だけで620人が拘束された”と報告しています。
http://www.worldtimes.co.jp/world/usa/67977.html
http://www.sankei.com/world/news/150222/wor1502220026-n1.html
http://www.asahi.com/articles/ASJCW3ST6JCWUHBI00C.html
海外に脱出したキューバ人は国民総数の15%にあたる170万人。
うち、アメリカに移住したキューバ人がもっとも多く、カストロが権力の座に就いた1959年だけで、マイアミに25万人が移住したと言われています。
ロワイヤルが言うように、革命が暴力を伴わず、その後も強権政治にならなかったのであれば、なぜこれほどのキューバ人が海外に脱出し、その後もし続けているのでしょうか?
2015年報道の自由度ランキングでは、キューバは180か国中171位。
ロワイヤル自身は、カストロが同じ社会主義者という(言われている)だけで擁護しているつもりかもしれませんが、国民から表現の自由を奪い、自分に逆らう人間を逮捕したり処刑したりして同胞に恐怖を煽るのは、独裁者以外の何者でもありません。
振り返ってみれば、彼女が所属するフランスの社会党はオランド政権になってからというもの、国民がどれだけデモをしようと、どれだけ反対の声を上げようと、あらゆる法案をゴリ押ししてきました。
以下の記事では2015年5月にオーランド大統領が今回のロワイヤルと同じ趣旨のことを言っていた、と伝えています。
コチラ ↓ の記事では、「セゴレーヌ・ロワイヤルとその仲間たちはいくらなんでも独裁者が好きすぎる」という見出しで社会党そのものを批判。
http://www.contrepoints.org/2016/12/08/274361-segolene-royal-amis-aiment-dictateurs
極右も怖いけど、社会主義も度を超すと同じ穴の貉(むじな)。
2007年の大統領選でロワイヤルがサルコジと競ったとき、彼女が勝たなくて本当に良かった・・・と今更ながら思わずにはいられません。
※カストロに関する日本語の記事で最も秀逸だと感じたブログ記事 ↓ 詳細でわかりやすいので必読です。 一方、一部の日本の知識人もカストロを絶賛中・・・なんで!?