続・真(ま)フランスの日常

フランスの時事、フランス生活の実態、エコライフ、日本を想う日々・・・                                    (ココログで綴っていた「真(ま)フランスの日常」 http://mafrance.cocolog-nifty.com/ の後継ブログです) 反核・反戦!

日仏7人の専門家が報告する10年目のFUKUSHIMA (1Fの現状&甲状腺がん発症数等の経過報告)

2021年3月6日、フランスの放射線独立調査団体CRIIRADが、日仏の7人の専門家や当事者代表を集めて、10年目のFUKUSHIMAの現状を報告しました。

(第一部 ↓)

www.youtube.com

https://www.youtube.com/watch?v=hcjDLHYN_zM&list=PL3IbOGKW-BxbUElfCoC3law3YY68bWxpJ&index=5

原発ロビーが牛耳る日本とフランスにおいて、特に日本では「風評被害」ばかりがクローズアップされる中、本当の現状を知る機会は滅多にありません。

司会を務めたCRIIRAD所長Yves Girardotは、「このウェビナーは、フランス人視聴者が対象ですが、現地にいながら情報が極端に少ない日本人にも是非知ってもらいたい内容です。また、参加する研究者のほとんどは、研究結果などを公表する場を与えられないことが多く、そういう意味でも、このウェビナーはとても有意義な機会です。」と明言しています。

参加者は、今中哲二(原子力工学者)
     崎山比早子(医学博士)
     コリン小林(フリージャーナリスト)
     黒川眞一(高エネルギー加速器研究機構名誉教授)
     大沼淳一(原子力市民委員会委員)
     森松亜希子(自主避難者)
                      Yuki Takahata(通訳)
                      Kurumi Sugita(通訳)
     Bruno Chareyron(CRIIRAD研究室代表)
     Roland Desbordes(CRIIRAD会長)
                      Yves Giardot(CRIIRAD所長)
                    


午前と午後に分けて開催されたWebinaire は、予定していた3時間半を大きく超過して、4時間半に渡って行われました。


トップバッターで、福島第一原発の現状を報告した工学者の今中哲二氏は、“約40年後に原発が解体された跡地を一般に開放する案”がある(!?)ことについて、絶対にあり得ないと断言します。

その理由はもちろん、事故が起きた福島第一原発の現状にあります。今現在、“1F”はどうなっているかというと・・・

  • 2021年1月、原子炉格納容器の上部に極度の高濃度汚染箇所があることが発覚した。その濃度は推定「30pBq(ペタベクレル)」。10年前の事故で放出されたセシウム137の全量が「20pBq」だと言われているので、炉心以外にも途方もない量の放射線が残っている。
  • 未だ取り出せていない炉心は、東電は当初「2019年までに方法を決定する」と豪語していたが、2021年の今も、それをいつ、どうやって取り出すかは全くの未定。
  • 除染のために発生した廃棄ごみは、政府が農家から買い上げた土地に“一時的”に保管していることになっているが、結局最終処分地は見つからないまま、いま置かれているところが最終保管場所になることが目に見えている。
  • 炉心を冷やすために注水&貯め続けた汚染水は、放射性物質を完全に除去できないまま2022年に海洋放出を予定している。また、汲み取れず地下に漏れる汚染水は、毎日150トンで、それを完全に制御することもできていない。
・・・ということなのですが、今中氏は、「原発跡地」を実現させるには、少なくとも100年は見据える必要があり、その後の構想も百年単位で練らなければならないだろうと指摘しました。


2番手の崎山日早子氏は、「発生率の高い甲状腺がんについて発言の機会を与えてくださり、ありがとうございます。」と述べた上で、以下のような貴重な調査結果を報告しました。

  • 事故直後、甲状腺がんの発症を抑えるために配布されるべきだった安定ヨウ素剤は、在庫が十分あるにも関わらず、政府から配布されることはなかった。独自の判断で安定ヨウ素剤が配布されたのは、たったの3市町村、合わせて約1万人分に留まった。
  • 甲状腺がんの検査は、その他複数の県民も当事者であるにも関わらず、福島県内だけで行われた。
  • 2011年10月、福島市は、18歳以下の市民38万人の甲状腺検査を開始した。結果はすべて福島県立医科大学付属病院にのみ記録され、検査は対象者が20歳になるまで2年ごとに行われた(20歳以降は5年おき)。子供の甲状腺がんは、年間100万人あたり一人か二人が発症する程度の極めて稀な病気であるのにも関わらず、2011年から2013年にかけて、約30万人が検査を受け、116人が陽性、101人が擬陽性だった。2014年から2015年は、71人が陽性、2016年から2017年は31名、2018年から2019年は27名が陽性と診断された。

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  • 2014年から2015年にかけて陽性と診断された患者のうち、33名は、その2年前には完全な陰性という診断を受けた。つまりは、腫瘍が2年間で少なくとも5㎜成長したことになり、その速度は異常である。
  • 福島県を汚染のレベルによって4つの地域に分けたところ、2011年から2013年にかけて陽性と診断された患者と事故当時の居住地との因果関係はなかったものの、2014年から2015年にかけては、汚染レベルが高い地域ほど発症率が高かった。これを受けて、UNSCEAR(原発ロビーの一つ)は、地域のレベル分けを独自の判断で変更し、「がん発症率との因果関係は見受けられない」と白を切った。

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  • 検査において、一回目に「がんの疑いがある」と診断された患者のうち、二回目の検査で異常が確認されなかったケースは、その後陽性の診断を受けてもカウントされないシステムになっている。それによって、病院が公表した手術実施数は、10年で19件。しかし、3・11甲状腺がん子ども基金によると、それ以外にも病院側がカウントしなかった15件が存在し、福島県外では、34件が実施されたことがわかっている。
  • 手術によって取り出された甲状腺は、長崎大学に送られ、遺伝子関連の検査が行われている。しかし、甲状腺の遺伝子に異変が見つかっても、チェルノブイリの原発事故以降に認められた変化とは異なることを理由に、福島医科大学は、「原発事故が原因ではない」とすでに断定している。

崎山氏は、最後に「2017年にNPO(3・11甲状腺がん子ども基金)が行ったアンケートによると、これまでに検査を受けた対象者の86%が、今後も検査を受け続けたい、と答えました。政府はこの結果を真摯に受け止め、その要望をかなえるべく適切な措置を取ってほしい。」と訴えました。
 

                                                                                          つづく

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