続・真(ま)フランスの日常

フランスの時事、フランス生活の実態、エコライフ、日本を想う日々・・・                                    (ココログで綴っていた「真(ま)フランスの日常」 http://mafrance.cocolog-nifty.com/ の後継ブログです) 反核・反戦!

Plantuはイスラモフォビア(イスラーム恐怖症)?

3月30日、ルモンド紙の風刺画家・Plantu(プロンチュ)が自身のツイッターに以下のような風刺画を投稿しました。

 

 

 Plantuはイスラモフォビア(イスラーム恐怖症)?

 

「ドルチェ&ガッバーナがヒジャブコレクションを発表」というタイトルの下に、ヒジャブ(スカーフ)で覆われたイスラム教徒らしき女性が二人。右の女性は「自爆ベルト」を連想させる物体を首からぶら下げ、「ベルトが流行るのはいつ?」という疑問文が添えられています。

 

 

この風刺画は、実際にドルチェ&ガッバーナがムスリム女性向けのコレクションを発表したのを受けて描かれたもの。ルモンド紙の紙面には掲載されませんでしたが、SNSで瞬く間に拡散され、“スカーフとテロリストを混同するなんてどうかしてる”、“Plantuはイスラムフォビア確定”、“早く引退しろ”・・・などと、ツイッター上で批判の嵐が吹き荒れました。

 

 

Plantu自身は騒動に対して「Je défends l'image de la femme 女性のイメージを守りたい」とコメント。

 

 

 

Plantuはこの風刺画で何を訴えたかったのか。

 

 

まず、彼の言う「女性のイメージ」とは「女性の権利」のこと。

 

 

これまで少しずつ勝ち取ってきた女性の自由、そして権利が、ファッションブランドの安易な発想で“奪われる”ことが許せなかったのでしょう。

 

 

その証拠に、風刺画の左端には、驚いて涙をながしている女性が描かれています。

 

 

 Plantuはイスラモフォビア(イスラーム恐怖症)?

 

 

この女性は、男女平等を始めとする普遍的価値を求める私たちの姿。

 

 

 

実際のところ、D&Gがヒジャブコレクションを発表したことに対して批判的な意見を公表したのはPlantuだけではありません。

 

 

デザイナーのアニエス・ベーAgnès b.は、「誰がどう思おうと、女性のイメージ(権利)を害する服をありふれたものとして扱うべきではない。」とLe Parisien紙に回答。

 

 

イヴ・サンローランのパートナーだったPierre Bergéは、「40年間イヴ・サンローランと生活を共にしていた私は、ファッションデザイナーというのは、女性を美しく見せるため、そして自由を手に入れてもらうために存在するものだと信じてきた。少なくとも、女性を隠すことを強要する世界と共謀するためではない。」とラジオ番組で憤慨しました。

 

http://www.lejdd.fr/Societe/Polemique-sur-la-mode-islamique-de-quoi-on-parle-779299

 

http://www.europe1.fr/economie/pierre-berge-semporte-contre-les-marques-qui-se-mettent-a-la-mode-islamique-2706730

 

 

 

 

アニエス・ベーの言う「女性のイメージを害する服」について、コーラン(クルアーン)には以下のような記述があります ↓

 

http://www2.dokidoki.ne.jp/racket/koran_frame.html

 

 

第24章 御光(みひかり)

 

31.信者の女たちに言ってやるがいい。かの女らの視線を低くし、貞淑を守れ。外に表われるものの外(※顔と手)は、かの女らの美(や飾り)を目立たせてはならない。それからヴェイルをその胸の上に垂れなさい。自分の夫または父の外は、かの女の美(や飾り)を表わしてはならない。なお夫の父、自分の息子、夫の息子、また自分の兄弟、兄弟の息子、姉妹の息子または自分の女たち、自分の右手に持つ奴隷、また性欲を持たない供回りの男、または女の体に意識をもたない幼児(の外は)。

 

 

 

ヒジャブなどは、地域や人によって解釈の違いがあれど、戒律が強いる義務として身につけなければならないもの。

 

 

 

つまりは、女性の自由の象徴とも言える“現代ファッション”とは相反するものだと言えます。

 

 

そんな“強要”を皮肉を込めずに真面目にコレクションに取り入れた高級ブランド・ドルチェ&ガッバーナは、批判されてしかるべき。

 

 

彼らの至らなさを批判することはイスラム教に対する差別でも恐怖症でもない、真っ当な主張なのです。

 

 

 

 

もう一つPlantuが訴えたかったことは、D&Gの経営方針に儲け主義が露見していること。

 

 

デザイナーのドルチェとガッバーナは、今回のコレクション発表に至った理由を「イスラム教徒は世界人口の22%を占めている。にも関わらず、欧米のオートクチュール界からは見捨てられている。」と説明。もっともらしいことを言っているように聞こえますが、実際は“22%の中から新しい顧客を呼び込みたい”というのが本音でしょう。

 

 

今回の騒動で、H&M、ZARA、Marks&Spencer、ユニクロなどの大衆向けファッションブランドが、D&Gより一足先に「需要があるから」という理由でムスリム“ファッション”に次々と参入していたことも、明らかになりました。

 

 

ファストファッションブランドが「儲け主義」なのは言わずと知れたことですが、高級ブランドのデザイナーが自身の信条よりも“需要”を優先した服作りをするのはかなり情けない。

 

 

このままいけば、Plantuの絵のように自爆ベルトを模倣したファッションアイテムがコレクション会場にお目見えするのも時間の問題。

 

 

 

女性をコルセットから解放したココ・シャネルが泣いています。