続・真(ま)フランスの日常

フランスの時事、フランス生活の実態、エコライフ、日本を想う日々・・・                                    (ココログで綴っていた「真(ま)フランスの日常」 http://mafrance.cocolog-nifty.com/ の後継ブログです) 反核・反戦!

アングレーム国際漫画祭の金賞作品を読んでみた

つい最近、こんな本を読み終えました ↓



アングレーム国際漫画祭の金賞作品を読んでみた

Riad Sattouf(リアド・サトゥフ)作 「L'ARABE DU FUTUR」というバンド・デシネ。

 

アングレーム国際漫画祭(ヨーロッパ最大級のバンド・デシネや漫画の祭典)の今年の金賞作品です。

 

タイトルの直訳は「未来のアラブ人」。 1978年にシリア人の父とフランス人の母の間に生まれた作者の幼少期(2歳から5歳くらいまで)の自伝で、独裁者カダフィのリビアで過ごした一年、同じく独裁者でバシャール・アル=アサド(現シリア大統領)の父親 ハーフィズ・アル=アサドのシリアで過ごした数年、束の間のフランス・ブルターニュ地方での生活が面白おかしく描かれています。

 

読みながら感心させられたのが、作者の観察眼のするどさ。 生まれたときから五感を研ぎ澄ませてきたであろう作者が幼少期に見たままの描写と、状況説明の「語り」が絶妙のバランスで一コマ一コマにおさめられ、まるで映画をみているかのよう。特に登場人物の描写は繊細で、外見はもちろん、性格やしぐさが手に取るようにわかります。 そしてとにかく面白い。独裁政権下での不足だらけの生活、庶民の野蛮ぶりに目が点になる一方で、他に類を見ない変わり者の父親が事あるごとに笑わせてくれます。

 

実はこの作者、2004年から2014年までシャルリー・エブドで8コマ漫画を連載していました。「La vie secrète des jeunes(若者の知られざる生活)」というタイトルで、作者が実際に遭遇した若者の日常の風景を描いていて、これもまた面白い。ここでも彼の観察眼が大いに生かされています。 連載をまとめた単行本が出ているので、フランス語がわかる人には是非読んでみてほしいです。

 

そして彼の才能はこれだけに留まらず・・・なんと映画も撮っています! 2009年の作品「Les Beaux Gosses(美男子たち(直訳))」。

アングレーム国際漫画祭の金賞作品を読んでみた


様々な賞を獲得したこの作品を、私はバンドデシネの作者だとは知らずに、公開年にたまたま映画館でみました。そしてとにかくリアルな状況設定に驚かされたのを覚えています。作者が中学生の頃の思い出を余すところ無く描いたようなシナリオで、中学生の真剣で滑稽な日常生活に、吹き出しそうになったり、見ているこっちが恥ずかしくなったり・・・。フランスの中学生の実状を知りたいなら、まずはこれ!とお勧めしたい、そんな映画です。中学生を演じる俳優たちの演技力も見もの。

 

Riad Sattoufは、この他にも俳優として映画に出たり、次々とバンドデシネを出版したり・・・ 次はどんな作品で笑わせてくれるのか、今後の更なる活躍が期待されます!(まだ36歳だし・・・)

 

※ 今回賞をととったBD(バンドデシネ)は、実はまだ一巻目。2016年までに3巻で完結するそうです。