続・真(ま)フランスの日常

フランスの時事、フランス生活の実態、エコライフ、日本を想う日々・・・                                    (ココログで綴っていた「真(ま)フランスの日常」 http://mafrance.cocolog-nifty.com/ の後継ブログです) 反核・反戦!

ベンゼマの妄想

5年前に買った我が家で唯一のパソコンの調子がいまいちで、いつまでたっても開かないページやフリーズする画面、突然落ちる電源と格闘しているうちに更新が滞ってしまいました。

 

更新しなかった間に、各ニュースサイトの話題のキーワード欄から「パナマ文書」が消え去り、東京オリンピックの裏金問題も東京都知事の政治資金の公私混同も大して追及されることなく今日に至り、この世の中が自分勝手なお金持ちのためにできていることを改めて実感する次第です。

 

 

 

 

さて、まだパソコンの調子が悪いままなのに、何が何でも更新しようと思わせてくれたのは・・・

 

 

 

「デシャン(フランス代表監督)はフランスの人種差別的な部分に屈した。」

 

 

Deschamps a cédé à la pression d’une partie raciste de la France.

 

 

 

という、開幕が数日後に迫ったサッカーの欧州選手権(ユーロ2016)のフランス代表に選ばれなかったFWカリム・ベンゼマの発言。

 

 

 

 

 

(問題発言が表紙になった、所属クラブ・レアルマドリッドのあるスペインの雑誌「MARCA」)

 

 

 

彼が代表に選ばれなかった本当の理由は、同じ代表選手だったマチュー・バルブエナを恐喝したから、というのはサッカー好きのフランス人なら誰もが知っています。

 

 

ところが、あろうことかその落選理由を「フランスの人種差別」にこじつけたものだから、フランス国内のSNSは大荒れ、ベンゼマに対する批判の嵐が吹き荒れているのです。

 

 

 

 

ベンゼマは、フランスはリヨン生まれのアルジェリア系フランス人。

 

 

イスラム教徒としても有名で、今回彼の言う“差別”もそれを指しているのかと思いきや・・・

 

 

どうやら“アルジェリア系”が原因だと思っているらしい。

 

 

 

 

確かに、欧州選手権に選ばれた23人の代表選手を見渡してみると、アルジェリア系の選手は選出されていません。

 

 

でもでも、セネガルやコンゴで生まれた選手もいれば、イスラム教徒の選手も少なくとも3人いるし、肌の色をみれば23人中12人が有色!

 

 

これだけバラエティに飛んだチームの中でアルジェリア系だけを差別しているなんて、誰がどう考えてもベンゼマの被害妄想もしくは自分がやったことを棚に上げた責任転嫁でしょう。

 

 

 

実際、今回代表に選出された、バイエルン所属のフォワード・Kingsley COMANは「(フランス代表の)どこに差別があるというんだ?よく言うよ。」と切り捨てています。

 

(Kingsley COMAN : lestransferts.com)

 

 

 

 

 

ただし、こんな情けない発言にも同調する人がいるのが、言論の自由大国・フランス(笑)

 

 

元フランス代表(1987〜95)のエリック・カントナは、ベンゼマの発言を待たずして「(代表選出に関して)一つ言えるのは、最も有能なフランス人選手のうちベンゼマとベナルファが欧州選手権でプレーしないということ。なぜかといえば、それは彼らが北アフリカ出身だからだろう。」と、代表リストが公表された直後に、ベンゼマ本人と同じ趣旨の“分析”をして物議を醸しました。

 

 

"Une chose est sûre, Benzema et Ben Arfa sont deux des meilleurs joueurs français et ne joueront pas l’Euro. Et pour sûr, Benzema et Ben Arfa, leurs origines sont nord-africaines"

 

 

 

 

カントナの発言の中で一つ興味深いことがあるとしたら、チュニジア国籍を持つベナルファにも触れていること。

 

 

(Hatem Ben Arfa)

 

 

 

29歳のベテランで、特に今期好調な彼を選ばなかった理由を監督のデシャンはこう言っています。

 

 

「彼は確かに今期好調でした。でも他にも好調な選手はいます。」(2016年5月13日付け レキップ紙の4面より)

 

Il fait une très bonne saison à Nice, mais d'autres font aussi une très bonne saison en club.

 

 

要は、ライバル競争に負けただけ。

 

 

 

で、カントナはその勝敗を分けたのが「チュニジア≒北アフリカ出身」にあると豪語しているわけですが・・・

 

 

実はベナルファは態度が好ましくない選手としても有名だったりします。

 

 

「彼に才能があるかどうかはわからない。ただ、ならず者の態度が目立つのは事実だ。行く先々で問題を起こす。チームメイトやコーチ、監督に対しても無礼極まりない。」

 

 

Je ne sais pas s'il a du talent ou non. Je m'en moque. Mais il a un comportement de petite frappe, de racaille. Partout où il passe, il fout le bordel. Il n'a aucun respect pour ses coéquipiers, ses entraineurs.

 

 

と、ベナルファを批判したのは、元フランス代表(60〜70年代)で現在スポーツジャーナリストのJean Michel Laqué。

 

http://sport24.lefigaro.fr/le-scan-sport/buzz/2014/12/07/27002-20141207ARTFIG00054-larque-ben-arfa-a-un-comportement-de-racaille.php

 

 

フランスのサッカー関係者がこうしてベナルファの態度を指摘するのはこれが初めてではなく、ベンゼマの落選理由を言わなかったデシャン監督がベナルファを選ばなかった理由について言葉を濁したわけも、ここにあるかもしれません。

 

 

 

 

もう1人、プレーよりも態度が悪いことで有名で、数年前に代表から退いたのが、イングランドのマンチェスター・シティに所属するSamir Nasri。

 

 

 

2012年に2度に渡って、ジャーナリストを罵ったとして3試合の出場停止処分を受けた過去があります。

 

 

2002年から約十年間、代表に選出されてきたNasriですが、2014年のワールドカップでは代表落選。その理由として、現監督のデシャンは、

 

「ナスリはベンチスタート(控え)だと機嫌が悪い。それは皆が感じることで、後に残る。」

 

il n’est pas content quand il est remplaçant. Ça se sent et se ressent.

 

と、はっきり述べています。

 

 

 

ベンゼマとベナルファとナスリ、この3人に共通するのは・・・

 

 

・北アフリカ系

 

・イスラム教徒

 

・態度や素行に問題あり

 

 

の3つ。

 

 

「フランス国籍」というのが最低条件である代表選出において、この3つのうちのどれが一番問題視されるかは、誰の目にも明らかではないでしょうか。

 

 

そして選ばれなかった正当な理由があるのに“差別主義者”呼ばわりするとか、ベンゼマと監督とどっちが差別主義者かも・・・

 

 

 

ってどっかで聞いたことあるな、この結論(笑)