ドイツ語の授業はエリート主義?!
ここのところ、旦那さんを酷く悩ませていることがあります。
それは、フランス与党の社会党が掲げる「中学校の学習指導要領改革案」。
今まで中学1年生から選択できたドイツ語を2年生からに遅らせ、更には週3時間の授業を2,5時間に短縮するというのです。
その理由が・・・
「ドイツ語の授業はエリート主義だから」
言い換えると、ドイツ語は難しいので、ついていけない生徒が多く“不平等”な科目だから。
???
まず、ドイツ語が難しい、というのは一般的なフランス人が持つ偏見であって、言語の難しさの判断は人によりけり。政府がとやかく言うことではありません。
そして、ついていけない生徒がいる状況が“不平等”なのであれば、それはどの教科にも当て嵌まり、ドイツ語ばかりを標的にするのはおかしい。(この理論どおりなら、得手不得手に分かれやすい数学なんかも“エリート主義”に分類されてしまう)
スペイン語にも同じ改革案が適用されますが、今現在フランスの中学ではドイツ語よりもスペイン語を選択する生徒のほうが遥かに多く(※)、このままだとドイツ語を選択する生徒数も授業数も減り続け、数年後には中学校のドイツ語そのものが廃止されるのではないかと懸念されています。 (※第二外国語はこのどちらかを選ばせる学校が多い)
ドイツ語と同じように標的になっているのが、ラテン語とギリシャ語。
日本語でいう古文や漢文のような存在ですが、フランスの中学校ではすでにオプション扱い。
「やりたい人だけどうぞ」とでも言いたげに、授業数は更に減らされ、こちらも廃止路線をひた走らされている感があります。
先週水曜日に発売されたLa Canard enchâné ではこの話を一面扱い。
小見出しは「中学校改革:あちこちで繰り広げられる論争」(à droite et à gauche=あちこちで と政治の右派(droite)左派(gauche)をかけている。
大見出しは「要は、皆のラテン語の授業がなくなるということ!」。これは「y perdre son latin=何がなんだかわからない」という慣用句を使って→「みんな何がなんだかわからなくなっている!」という意味をかけたもの。
この見出しの通り、改革案は当事者以外にはさっぱり良くわからない内容で、わかったとしてもどうでもいいことだったりします。
ドイツ語と関わりのない生活をしている人や、ラテン語の有用性を感じない人の多くは、「別にいいんじゃない?」と思うかもしれません。
でも、ヨーロッパの主要言語のひとつであるドイツ語の授業数を減らしたり、フランス語の基礎となり歴史となるラテン語やギリシャ語を廃止することは、平等な教育でもなんでもない、ただの怠慢です。
フランスの教育システムにガタが来ていることは事実。
カナール・アンシェネが挙げている問題点の一つは・・・
一クラスの生徒数がヨーロッパで最も多い
↓
生徒の15%が授業についていけない
↓
毎年15万人が進級できなかったり、卒業を諦めたりする
この現状をドイツ語やラテン語のせいにするのはいかがなものか・・・
改革しなければならないことははっきりしています。
それは、クラスや教師を増やして、生徒一人一人に行き届く教育システムにすること。
そのためには当然、経費削減とは逆のことをしなければなりません。
ましてや“平等”という名のもとに、教科数つまりは教師の数を減らそうなんてもってのほかです!
☆ 本日19日、フランス全土でこの法案に反対するデモが行われます。
デモの報告と改革案のその後についてはコチラから