続・真(ま)フランスの日常

フランスの時事、フランス生活の実態、エコライフ、日本を想う日々・・・                                    (ココログで綴っていた「真(ま)フランスの日常」 http://mafrance.cocolog-nifty.com/ の後継ブログです) 反核・反戦!

3・11 フランス各紙が伝えたこと

あれから5年・・・

 

 

2016年3月11日付けのフランス各紙の報道をまとめてみました。

 

 

ルモンド紙

 

3・11 フランス各紙が伝えたこと 

 

1面に、北海道から来たという19歳の除染作業員の写真を大きく掲載。

 

 

 

 3・11 フランス各紙が伝えたこと

 

6・7面で被災地、避難者、帰還者、福島第一原発の現状を報告。帰還者については現在避難区域に設定されている南相馬市の小高(おだか)区で起業した和田智行氏を紹介。彼は住民が戻る前から地域をある程度活性化させておくために、小高で事業を始めたい人のためにワーキングスペースを提供したり、食堂や食品スーパーを営業中(後者二ヶ所を現在利用しているのは除染・原発作業員)。一方で、避難者の多くが精神疾患を抱えていること、震災関連死者数は3407人(うち58%が福島県民)に上ることにも触れ、希望が見えない被災者が多くいる実態が綴られています。

 

 

 

 

3・11 フランス各紙が伝えたこと

 

16面にはフランスのジャーナリストの中で最も日本に精通しているであろうPhilippe Ponsが書いた“日本からの手紙”を掲載。東北の人々はこれまでにも津波などの自然の脅威を経験し耐えてきたとした上で、岩手県出身の宮沢賢治の『雨ニモマケズ』の冒頭を紹介。また、関東大震災(1923年)を大使在任中に経験したPaul Claudel(※Camille Claudelの兄)の考察が東北の現状に酷似すると指摘。「過去は消せないと感じる。ただ遠ざかっていく。世の中が変わろうとしても何かが抜け落ちたまま。それは凍結され、目に見えない資料館に永遠に記録される。」ただし、100年以上前の津波とも関東大震災とも違うのは原発事故が起こり今も続いていること、と締めくくりました。「嘘、不明瞭な情報、権力者たちの傲慢が続く中、一時的だったはずの仮設生活は当たり前になった。何もかもが平穏とは程遠い。」

 

 

 

 

フィガロ紙

 

3・11 フランス各紙が伝えたこと

 

3・11 フランス各紙が伝えたこと

 

原発作業員らしき写真と共に一面で報道

 

 

 

3・11 フランス各紙が伝えたこと

 

10面に福島第一原発の現状と健康被害を報告:健康被害に関しては、IRSN(フランス放射線防護原子力安全研究所=原発ロビー)の関係者の話と原発ロビーと関わりのない日本の医師や大学教授の話を交互に載せていてどっちつかず。現状をよく知らない読み手にとっては結局健康被害があるのかないのかよくわからない残念な記事でした。

 

 

 

3・11 フランス各紙が伝えたこと

 

13面では福島の避難者の現状を報告。不平等な補償金システム、それに伴う被災者同士のいがみ合い、終わらない仮設生活、不便な生活に懲りて仕方なく帰還する人たちについて。最後には海沿いに400kmに渡って建設される防波堤を批判。「この不合理な計画は、借金を抱えた日本に更に1兆円の負担を強いる。居住禁止にすれば費用はかからない上、景観を損なうこともないのに。」

 

 

 

3・11 フランス各紙が伝えたこと

 

15面には、決して安泰とは言えないフランスの原発業界に関する論説。福島の原発事故以来、近隣国が脱原発を進めていく中、ヨーロッパで唯一の原発超推進国フランスの電力会社や関連会社はジリ貧。それでも原発推進派のフランス人たちは「電気料金が安すぎるから」とか(ってそれが売りじゃなかったっけ!?)「ヨーロッパだけを見ると“冬の時代”に見えるだけ」と意地を張るのだそうな。でも世界を見渡してみて原発に力を入れているのは、ロシア、中国、インド、ブラジル・・・と民主主義とは疎遠な国ばかり。ここにフランスが入ってて良いわけがない・・・はずですが!?

 

 

 

 

Aujourd'hui en France (パリではLe Parisien=わかりやすさが売りの大衆紙)

 

3・11 フランス各紙が伝えたこと

 

14面に福島からフランスに移住した日本人女性・春子ボアグリオ(Boaglio)さんの話を掲載。以前に彼女がテレビ出演していたのを拝見したことがあって、すぐに彼女だとわかりました。あの日、フランス人の夫と3歳の娘と福島県の三春町(福島第一原発から40km)で生活していた彼女は、反原発活動家の友人の「一号機が冷却できない!逃げて!」という声を受けて家族と共に着の身着のままで南下。千葉県の実家で一号機の爆発をテレビで見た後、フランスの勧告通りに更に西へ。18日にはフランスが用意したチャーター機で渡仏。それ以来、日本には帰っていないそうです。人によって受け取り方は様々だと思いますが、私は彼女の決断は正しかったと思います。確かに、彼女は「幸運だった」のかもしれません。でも、フランスまでは行けないにしても、もっと放射能の心配のいらない地に移住する権利を皆が持つべきだった・・・と今でもしつこく思うのです。

 

もう一つの記事では、今も絶え間なく続く放射能汚染に関する記述。l'Accroという原発ロビーとは無関係の放射線研究機関に所属するフランス人研究者の話をまとめたもので、チェルノブイリが地上の汚染だったのに対して福島ではほとんどが海に流出していること、政府の放射線量検査が信用できず市民団体が運営する試験所が増えていること、除染をしても「帰りたくない」避難者がいるのは当然なことが簡潔に書かれています。

 

 

 

La Croix(カトリック系の日刊紙)

 

3・11 フランス各紙が伝えたこと

 

3・11 フランス各紙が伝えたこと

 

3・11 フランス各紙が伝えたこと

 

6面に帰還政策に関する記事を掲載。見出しは『不可能な福島住民の帰還』。<原発から20キロ圏内に帰還する人は8〜10%に満たず、そのほとんどが高齢者>とするパリ政治学院の研究者・長谷川玲子氏の話を中心に、政府の愚政を指摘。「世論のほとんどが再稼働に反対しているだけでなく、政府を信用していない。」

 

 

 

この新聞の311関連の記事はこれだけですが、別のページにこんな風刺画も載っていました ↓

 

3・11 フランス各紙が伝えたこと

 

風車「そろそろ引退を考えるべきなんじゃない!」(※原発に向かって)

 

太陽光発電「若者に地位を譲れ!」

 

 

これは、メディアにしろ一般企業にしろベテランが居座る傾向にあるフランス社会になぞらえたもの。

 

思わず「うまいっ!」と唸ってしまいました。