農薬をやめられないフランス ※追記あり
2008年、フランスの農業省が『Ecophyto』という農薬減量キャンペーンを始めました。
目標は10年で半分。
対象は大量生産の大規模農家から趣味でガーデニングをする人まで、農薬を使う人すべて。
農薬は例えそれが農作物にほとんど残らなかったとしても、土を痩せさせ、農家に深刻な健康被害をもたらし、大気汚染の原因にもなるという、百害あって一利あるかないかの恐ろしい代物です。
そんなものはできることなら一刻も早く使用禁止にしてもらいたいところですが、10年で50%減でもやらないよりはまし。
ところが、2018年を待たずしてキャンペーンの大失敗が確定したことが判明しました。
なんと、フランスにおける農薬使用量は減るどころか増え続けていて、2009年から2013年の間に5%、2012年から2013年にかけては前年比で9%も増えてしまったのだそうです。
そこで、社会党の農業大臣Stéphane Le Follは新しい目標を設定。
期間を大幅に延長して、2025年までに50%減、中間目標は2020年に25%減としました。
今年は2016年なので、9年で半減を目指そう!
・・・ってあんた、要は振り出しに戻してやり直そうってことじゃん(笑)
原発ほど有名ではありませんが、農業界にも農薬ロビーというものがあります。
アメリカのマンモス企業『モンサント』という、農薬や遺伝子組み換え種子を販売する、ちょっとやそっとのことではビクともしない輩が牽引しています。
彼らはもちろんフランスにも触手を伸ばし、除草剤、殺虫剤などを相手を問わず売りまくり、フランスの大地そして人を汚染し続けているのです。
一度農薬に慣れてしまった農家が有機農家や無農薬農家に転身するのは至難の業。
補助金が出ようと出まいと、それまで当たり前のように使っていた農薬を半分にするだけでも相当の努力を有するもの。
農家の意思は頼りにならず、モンサントにフランスから撤退してもらうのが一番手っ取り早いけれどそんなことはあるはずもなく、農薬使用量半減はまたしても絵に描いた餅のまま2025年を迎えてしまいそう・・・
と思っていたら、漫画家たちがさっそく“絵”にしていました ↓
GORCE(2016年3月11日付 ルモンド紙 16ページ掲載)
左のペンギン 「そんなに沢山ふり掛けちゃって、おたくの農作物を食べても大丈夫かな?」
右のペンギン(農家) 「大丈夫。これは売るだけで僕は食べないから。」
COLCA NOPA(2016年3月11日付 Aujourd'hui en France別冊付録 90ページ掲載)
拡大 ↓
一コマ目 「ふぅ(ため息)」
二コマ目 「今朝さぁ、学校で気が滅入っちゃうドキュメンタリーを見たんだよ ね・・・」
三コマ目 「・・・野菜の残留農薬のハナシでさ」
四コマ目 「特にブロッコリーが酷いんだって。」
〜4コマまんがの解説〜
解説なんていらないかもしれませんが・・・女の子の心の中はこんな感じ ↓
(ブロッコリー食べるのイヤだなぁ。・・・あっそうだ、今日学校で見たドキュメンタリーに農薬の話が出てきたから、このブロッコリーにも残留してることにしちゃえ!そうすれば食べなくて済むし!)
で、この子の親は「?!」と反論できずに困っていますが、このブロッコリーが無農薬なら余裕で言い返して食べさせることができます。
「何言ってるの?これは無農薬なんだから、つべこべ言ってないで食べなさい!」
・・・というよりも、無農薬とか有機栽培のブロッコリーはおいしいので、こういう状況に陥ること自体がないのです。(たぶん)
〜追記〜
2015年6月の時点で、オーガニック(無農薬・有機栽培)農地の占める割合はたったの6%。
農業大国、食料自給率120%などと聞くと褒めたくなるもので、実際にそれはフランスの強みとして評価されがちですが、その90%以上に農薬が使用されていることは批判されて然るべきです。
このEcophytoキャンペーンは、その現状に危機感を持って始めたこと。
一度失敗したからといって諦めるわけにはいきません。