フランスの酪農家は怒っている
昨日の夜、地元農家数百人が集うデモに遭遇しました。
デモと言っても、彼らが集まったのは歩道でも広場でもない、道路上。
通行量の多い公道に複数の巨大なトラクターをジグザグ状に停車して、行き交う車を完全に阻むことなく訴える作戦です。
(何百メートルと続く巨大トラクターの群)
(中央分離帯からわざとはみ出して停められたトラクター。中央には警察車両)
彼らは何に対して怒っているのか。
怒りの矛先にあるのは、フランス全国に網羅する大型スーパーチェーンや乳製品メーカーです。
「もっと下げられませんかねぇ。無理なら他に鞍替えしますよ。」
・・・などと言って脅しながら原価の値下げを要求する“食品業界の事実上の支配者”に嫌気がさした酪農家の一部が反発し始めたのが1週間ほど前。それに共感した同業者たちの“道路封鎖作戦”は瞬く間に全国に広がりました。
昨日のデモで配布していたビラに、こんなリストが載っていました ↓
フランス第4位の資産家 Auchan(大型スーパーチェーン)のG・Muliez(経営者)
フランス第13位の資産家 乳製品メーカー「Président」のE・Besnier(同上)
フランス第24位の資産家 Cora(大型スーパーチェーン)のJ・Bourrier(同上)
フランス第44位の資産家 乳製品メーカー「Vache qui Rit」のA・Fienet(同上)
フランス第102位の資産家 乳製品メーカー「Caprice des Dieux」のA・Bongrain(同上)
最後の102位の経営者は載せなくても良かったんじゃないかという気はしますが、フランスの資産家リスト50位以内に乳製品を扱う大手企業経営者が4名も名を連ねています。
極めつけはこの一文 ↓
「大型スーパーチェーン・ルクレールの経営者 Michel Edouard LECLERCの年収:75億円」
こんな実態を知れば、酪農家の多くが「そんなに儲かってるなら、原価を上げさせろ!」そうでなければ「これ以上下げるな!」と思うのは当然です。
ここ数年、フランスの大型スーパー間の低価格競争はヒートアップしていて、顧客にとっては有難くても農家がギリギリの生活を強いられるという状況が続いていました。
酪農家たちがこうして怒りをあらわにするのは今回が初めてではありません。
うちの近所の「封鎖作戦」は名ばかりで交通がストップしないように配慮されていましたが、場所によってはタイヤを燃やしたり完全封鎖しているところもあるようです。(あのモンサンミッシェルに通じる道路も!)
我慢の限界が来た農家たちの強引な手段に眉をひそめる人も多いようですが、肝心の大手企業が聞く耳をもたないのであれば消費者や国の関心を引くしかありません。
反発開始から1週間の今日、オランド大統領が「耳を貸すべきだ」と大手企業に促しました。
果たして、“支配者たち”は酪農家等と対等な立場に立つことを受け入れるのか・・・
※うちの郵便受けに入ってくるチラシを見ると、ある大型スーパーでは牛乳1リットルがたったの60セント(100円以下!)で売られていました。これ以上下げたら水同然。そりゃ怒るはず・・・