続・真(ま)フランスの日常

フランスの時事、フランス生活の実態、エコライフ、日本を想う日々・・・                                    (ココログで綴っていた「真(ま)フランスの日常」 http://mafrance.cocolog-nifty.com/ の後継ブログです) 反核・反戦!

押し寄せる難民

海からも陸からもMigrant(移民)とRéfugié(難民)がEU諸国に押し寄せるようになって数ヶ月。

ハンガリーの国境には鉄線が引かれ、フランスとイギリスを繋ぐユーロトンネル内ではMigrant移民が犠牲になる事故が相次ぐなど物々しい雰囲気が続いていましたが・・・

我が家が一週間前まで滞在していたドイツは正式に彼らを受け入れることを決め、国を挙げての難民歓迎ムード。 有志が難民を迎え入れる準備を手伝ったり、有名人が「Flüchtlinge(※)に寛容に!」などと呼びかけるなど、毎日が“24時間テレビ”状態になっています。

※ドイツ語で難民の意

ところでこの「移民」及び「難民」という言葉、ドイツでは「難民」を意味する言葉が使われているのに対して、フランスでは数日前までほとんどのメディアがMigrant(移民)と呼んでいました。 仲介者に多額の渡航料を払いボートに詰め込まれた人々がイタリアやギリシャに漂着していた頃は、実際の難民の数も少なく(シリア人は約20%だった。)Migrants(移民)でも違和感がなかったのです。

ところが、ここ数日で陸からの移動者、つまりは明らかに紛争やイスラム国の脅威から逃れようとする人々が注目され始めたことで、この呼び名に疑問を呈したり、使い分けを始めるところが出てきました。

フランス公共放送のサイトでは「"Migrants" ou "réfugiés" : quelle différence ?」(「移民」と「難民」どう違う?)という見出しで移民と難民の違いを解説。 「難民は移民に含まれる」という専門家の言葉を紹介しながら、「難民」とは言い難い「移民」が難民申請を試みることもあって定義づけが難しいとしています。
http://www.francetvinfo.fr/monde/europe/migrants/migrants-ou-refugies-quelle-difference_1068299.html

一方、ルモンド紙は「Migrants,exilé,réfugié: les mots pour le dire」(移民、国外追放者、難民:適切な表現は?)というタイトルの記事の中で、ルモンド紙は今後、「Migrant 移民」と「réfugié 難民」をしっかり区別して報道していく、と伝えています。
http://www.lemonde.fr/immigration-et-diversite/article/2015/09/04/migrant-exile-refugie-les-mots-pour-le-dire_4745562_1654200.html


さて、難民と一口に言ってもドイツに辿り着いているのは、どうやらシリア人だけではなさそうです。

先週のドイツの時事週刊誌「DER SPIEGEL」に、今年の1月1日から7月末までにドイツで登録された難民の内訳が載っています。


押し寄せる難民


もっとも多いのが、既に国民の5分の1が国外脱出したと言われているシリア人4万2100人、その後にコソボ、アルバニアと続きますが、10年以上前に紛争があったバルカン半島の国々(コソボ、アルバニア、セルビアetc)だけで3分の1以上を占めていることがわかります。(Sonstigeは「その他」)

バルカン半島の国々は戦禍が過去のこととはいえ貧困が深刻で、それに耐えられなくなった人々が移動していると見られています。

ちなみに、昨年2014年のフランスにおける難民申請者及び登録者の傾向はこれとはかけ離れたものでした。

押し寄せる難民
Le monde.fr より)

2014年、フランスで最も多かった「Demandeur d'asile 避難所申請者」の国籍5カ国は・・・


1.コンゴ共和国

2.バングラデシュ

3.ロシア

4.中国

5.パキスタン

だったのに対して、実際に登録された人の国籍は・・・


1.シリア

2.ロシア

3.スリランカ

4.ギニア

5.コンゴ共和国


の順でした。

申請者と登録者の国籍順が全く違うのもさることながら、ロシア人の亡命者(?)が一年に1000人以上もフランスで登録されたことに驚かされます。そ

して、最も多い登録国籍のシリアだけでなく、その他諸々の国からそれぞれの理由で国外逃亡を余儀なくされる人々がいることを再認識させられます。 フランスの難民に関する2015年のグラフは見つかりませんでしたが、難民を積極的に受け入れたとしてもこの順位はあまり変わらないと思われます。

今年はこのペースで行けばドイツが受け入れる難民の数は80万人に膨れ上がると言われています。 以下の記事では、2015年は『難民が西ヨーロッパに殺到した年』として歴史に残るだろうと伝えていますが・・・

http://www.france24.com/fr/20150907-refugies-syriens-afflux-massif-europe-migrants-allemagne-ue-syrie

実はヨーロッパでは、紛争や飢饉などを理由に大移動が起こるのはこれが初めてではありません。 以下のページでは、過去100年にヨーロッパで起きた10回の大移動を紹介しています。

http://www.franceculture.fr/2015-09-04-migrants-refugies-demandeurs-d-asile-en-europe-33-un-afflux-exceptionnel

直近の大移動は、1999年に紛争から逃れるために近隣国に移動したコソボ人:74万人。 1992年には合計100万人のアルバニア人とユーゴスラビア人が紛争を理由に西ヨーロッパになだれ込みました。 1982年、68年、56年にも、東欧諸国から数十万人ずつが西ヨーロッパへ。 1945年にはチェコスロバキアやポーランドにいたドイツ人が終戦と同時に国外退去命令を下され、合計120万人がドイツに「帰国」。 1939年にはスペイン王政から逃れようとしたスペイン人50万人がフランスに移動しました。 1926年にもアルメニアの大虐殺から逃れた6万5千人がフランスへ                                      etc

シリア人が戦禍を逃れて移動した近隣国は、自国のことで手一杯(他国に難民申請できるほど庶民の生活環境が悪いところもある)。難民たちが最後の希望を持って西ヨーロッパを目指す今、ドイツのメルケル首相が今年はそういう年なんだと割り切って難民受け入れを決めたのだとしたら、納得がいくような気がします。


(この記事 ↓ が今の移民・難民の実態を一番詳しく解説しています。ただし、はっきりとした数字はつかみ辛いのが現状)
http://www.lemonde.fr/les-decodeurs/article/2015/09/04/comprendre-la-crise-des-migrants-en-europe-en-cartes-graphiques-et-videos_4745981_4355770.html